陶芸家のように捨てる

陶芸家のように捨てる

陶芸家と写真家は似ている、と以下のYouTubeの動画、写真家の金村修氏の撮影風景の動画をみて思いました。

著名な写真家でもシャッターを押すたびに名作が生まれるというわけではなく、厳しい取捨選択によって作品を生み出している様子がリアルに描かれています。

金村氏はmakinaで撮ったフィルムを現像して破って捨ててを繰り返し特に気に入ったものだけを「作品」として抽出するという点で、同じく気に入らない器をどんどんと壊しながら作品を取捨選択していく陶芸家とよく似ていると思いました。

カメラを持って道を歩いただけで名作が次々と生まれる写真家もいる(?)かもしれませんが、写真家が個展などを開いたり作品集を出す場合には、何百枚に1枚の割合かそれより厳しい基準で作品を選び出すことも珍しくないでしょう。

選ばれなかった写真は破り捨てられ(パソコンのごみ箱で消去され)「作品」となるべき写真の「肥料」になるのです。

「肥料」(捨てた写真)の量が多いほど、「作品」(選ばれた1枚)は輝くのかもしれません。

フードコーディネーターはよく、撮影用の林檎などの食材を数多くの中からじっくり選んで、最も形の良いものに「1番」次に形のよいものに「2番」などと番号をふってフォトジェニックな林檎を選定しますが、選ばれた林檎の背後には実にたくさんの選ばれなかった林檎が存在しています。

フォトグラファーも同様、撮った写真に順位をつけて(多くのカメラマンはアドビの現像ソフトLightroomで星印を★1つ〔最低〕から★5つ〔最高〕をつけて)良い写真と良くない写真を取捨選択しています。

★4や★5つの基準はそれぞれのカメラマンによって違うと思いますが、自分の場合は(ストックフォトの人物撮影では)平均すると★5つを付けるのは1%~1.5%くらいの割合しかありません。★4つが7%前後です。

ストックフォトを提出する際には、★5つのものだけ提出すると1000枚撮っても10~15枚しか提出できないので、★4つの写真も含めて提出しています。

最近の撮影ではほとんど、1度の撮影(比較的短いセッション)でストックフォトに提出する写真は80枚前後、多くても100枚くらいとなっています。

枚数だけを目指すなら大きなスタジオで従来的なストックポーズをバリエーション含めて次々と撮影するのが一番かもしれませんが、もはやそういう撮り方のストックは(被写体が10人くらい登場する大規模なものを除いては)飽和しているようにみえます。

もちろん、どのような撮り方で、どの程度の選定基準を課してストックフォトを提出するかという問題は、各々のフォトグラファーの考えや立場(専属か併売か、どこの会社に提出するかなど)によって異なるため、これが正解だということは困難です。

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