2023年の回顧と展望4

2023年の回顧と展望3」から続く

最後に3「販売に関して自己の関与を高める方法を試行していくこと」について考えてみます。販売に関してストックフォトのもどかしいところは、いったん販売会社に写真を預けたら、フォトグラファー自身は販売に関与できないことです。すべては検索順位5頁以内に入らなければ売れる確率は皆無になってしまいます。そしてその検索順位を決めるのはフォトグラファー本人ではなく、ストックフォト会社(のアルゴリズム)に他なりません。それでもフォトグラファーの側で少しでも販売に関与できる方法というのはあるのでしょうか?

一つはインスタグラムなど通じて自分の写真を宣伝をしていき、名前を少しでも知ってもらうことが考えられます。ストックフォト的な写真がインスタグラムで受容されるかという問題はありますが、広くSNSを通じてセルフプロモーションをしていくことは無駄にはならないでしょう。

二つ目はごく限られた人限定ですが、少数のトップのストックフォトグラファーならば、写真の掲載順位等についてストックフォト会社のクリエイティブディレクターなどと直接話し合ったりそれとなく意見を言ったりすることもできるでしょう。限られた有力なフォトグラファーを掲載順位で優遇することは、会社側にとってはポートフォリオの安定化をもたらす一方、顧客側から見れば多様性を欠いたダイナミズムのないポートフォリオになってしまう可能性もあります。顧客は最初の5頁しか見ないので、検索項目に対して最初の5頁にどのような写真を置くかということが、その会社のポートフォリオを強く印象付けることになるのです。特にサブスクリプション契約の顧客なら、日々新しい写真、新しいテイストの写真が検索上位に並ぶことを期待しているでしょう。

三つめは技術的あるいは資金的な制約が大きくなると思いますが、アルゴリズム任せの販売方法にストレスを感じる人や、他人との競争に飽き飽きした人、あるいは売り上げの伸びない中間のストックフォトグラファーたちは独自の販売サイトを構築するなどしてオリジナルの販売方法を模索していく方がストレスフリーで楽しいかもしれません。現在のストックフォトビジネスは、これからストックフォトを始めようとする新規参入者はもとより、すでに枚数の蓄積を持っている中間グループのフォトグラファーにとっても厳しいものがあるのが現状です。ストックフォトとお笑い芸人の世界は似ています。いつまでもトップに君臨するベテランのお笑い芸人をその下の芸人が超えることはシステム的に難しいのです。テレビのバラエティー番組に少ししか出られない中間や若手の芸人は、テレビにこだわらず、Youtubeで活動の幅を広げる人たちもみられるようになりました。好むと好まざるとにかかわらず、上が詰まると横にはみ出て新天地を探さなければならないのが世の常でしょう。来年2024年からは本格的なAIとの競争も始まるでしょうし、さらにストックフォト業界はストックフォトグラファーやストックイラストレーターを窮屈な状況へと追いやっていくことでしょう。そのようなときにすでに蓄積している自分の写真やイラストをどのような独自ルートで換金していくかということを積極的に考えていくべき年が2024年ということになると思います。

以上、4回に分けてストックフォトに関する「2023年の回顧と展望」について述べてみました。

30

dec 2023

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