この日、ある27歳の男性が他人のAI生成物を無断で複製し使用した「著作権法違反」の疑いで千葉地検に送検されました。
このニュースを聞いて、ある人は当然のことと思い、またある人は少し疑問に感じるかもしれません。
「著作権法違反」と聞いて、AI生成物に著作権が認められるのかどうか疑問に感じた人、AI生成物でも著作権が当然認められるだろうと感じる人に分かれるのではないかと思います。
それもそのはず、日本ではAIが作ったものが著作物であるかどうかは、まだ法律で明確に決められていないのです。
AI生成物を無断で複製した人を「著作権法違反」の疑いで送検するこの事例は、日本で初めてAI生成物の著作物性を前提に送検が行われた事例です。もしこれから起訴され裁判が開かれてAIの著作物性が認められることになれば、日本で初めてAIの著作物性を認める判例が出ることになります。
以下、なぜ男性が著作権法違反の疑いで送検されたか、ということを見ていきながら、AI生成物と著作権の関係についてクリエイターの立場から考えてみたいと思います。
なお、この記事はフォトグラファーとしての日々の撮影業務の中で感じた法律に関する疑問を、個人的な関心にしたがって書いています。詳細で正確な法的な知識を必要とされる場合には、法律の専門家にご相談ください。
日本において、生成AIと著作権の関係を明確に述べた法律がないのが現状です。判例もその蓄積もありません。
こうした事態をふまえて、文化庁は令和6年(2024年)3月15日、生成AIと著作権の関係を整理して一定の方向性を示すため、文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会において「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめました。またこの「考え方」をより分かりやすく示した「AIと著作物に関する考え方について」の【概要】も翌4月に出されました。
それらの中で、AI生成物が著作物にあたるかどうかについて、AIが自律的に生成したものは著作物ではない、という見解が示されています:
「AIが自律的に生成したものは、 「思想又は感情を創作的に表現したもの」ではなく、著作物に該当しないと考えられます」と【概要】(p.15)で説明されています。
ここで注意することは「AIが自律的に生成したもの」という言葉です。【概要】の中で「AIが自律的に生成したもの」とは何かということが注釈されていて、「人が何ら指示を与えず(又は簡単な指示を与えるにとどまり) 「生成」のボタンを押すだけでAIが生成したもの」と説明されています。
つまり、人間が簡単なプロンプトを入力して、AIが即座に生成したものには著作物性が生じないということになります。
ではAIが自律的ではないかたちで生成したものに関してはどうでしょうか?
簡単なプロンプトではなく、複雑で独創的なプロンプトを、何度も入力して出力を繰り返した末にAIが作ったものであれば、著作物として認められる可能性があるという見解を文化庁は示しています。
「人が思想又は感情を創作的に表現するための「道具」としてAIを使用したものと認められれば、著作物に該当し、AI利用者が著作者となると考えられます。」(【概要】p.15)
つまり、自律的にAIに任せるのではなく、創作のプロセスに人間(AIの利用者)が主体的に関与することが、AI生成物の著作物性を認める前提となっています。
ここで難しいのが、関与の度合いです。人間がAI生成にどれくらい関与して、プロンプトを何回くらい入力し、何度作り直せば、AIが作ったものでも著作物性が認められることになるのでしょうか?
実は、文化庁の見解では「プロンプトを何回入力すればよい」「何回作り直せば著作物性が認められる」といった回数による基準は一切示されていません。
文化庁は具体的な回数には触れず、基本的には人間の創作的寄与の質で判断するという立場に立っています。
「(生成の)試行回数が多いこと自体は、創作的寄与の判断に影響しない」と述べる一方で、「創作的な表現」と合わせて何度も指示や生成を繰り返し、意図した表現に近づけるために調整している場合には「著作物性が認められることも考えられる」と述べています(「考え方」p.40)
では、このことをふまえて、冒頭で述べた11月20日の送検事例についてみていきたいと思います。
2024年8月25日、神奈川県に住む27歳男性(A氏とする)が、千葉県に住む男性(B氏とする)の所有する生成AI画像を、無断でSNSからダウンロードし自身の販売用の電子書籍の表紙として利用したという事案が起こりました。この生成AI画像はB氏が「Stable Diffusion」にプロンプトを入力して作成したもので、B氏自身のSNSに掲載されていました。この画像を見たA氏は、画像がA氏自身が作った電子書籍の表紙のイメージによく合っていたため、それをダウンロードして若干の加工を加えて電子書籍の表紙として使用したということです。
読売新聞の取材に対し、B氏は画像の生成に際しプロンプトを「2万回以上」試行し、生成結果を確認しながら、詳細な指示と修正を繰り返したと話しています(参照)。千葉県警もB氏からプロンプトの入力や確認・修正作業について時間をかけて詳細なプロセスを聞き取り、B氏の画像には創作的寄与が充分にあるとみて画像を著作物と判断し、2025年11月20日A氏を著作権法違反で送検したというのが事件の概要です。
2万回という数字が正確なものかどうかは分かりませんが、生成に際してものすごい努力がなされたことが伝わってきます。事件が起きたのが2024年8月、B氏が警察に相談したのが2024年10月、送検されたのが2025年11月なので、AI生成物に著作物性が認められるかどうか、生成のプロセスを含めて慎重に判断されたものと思われます。
2026年1月16日現在、起訴されたという報道はありません。長ければ起訴まで数か月かかることもあるようです。
ドラマタイトルにもあったように、日本の刑事裁判では起訴されれば(99.9%)ほぼA氏の有罪が確定し、AI使用者の創作的寄与のもとで作成されたAI生成物を著作物と認める日本で初めての判例が確立することになります。その裁判の過程で、プロンプトの内容や回数、修正の具体的な方法や形態が明らかになり、このことが今後同種の事件が起きた時にAI使用者の「創作的寄与」の有無を決める一つの指針となるでしょう。
では、起訴されない場合や万一裁判で検察側が負けた場合にはどうなるか考えてみましょう。
問題は、起訴されなかった場合、もしくは万一裁判で著作権が否定された場合にはA氏は完全に無罪放免になるのかということです。
ここからは法律的な知識が必要なので、AI(Copilot)に聞きながら進めていきます。
もし裁判でAI生成物に著作権が認められなかった場合には、送検された男性は無罪放免で何の罪もないことになるのかどうかをAI(Copilot)に聞いてみました。
【以下Copilotの説明】
著作権法違反(複製権侵害)は、次の前提が必要です:
もし裁判で
「そのAI生成画像は著作物ではない」と判断された場合、
つまり、構成要件が欠けるため、著作権法違反は成立しません。
では、他の罪で処罰される可能性は?
【以下Copilotの答え】
今回の事案の事実関係(AI画像を無断で電子書籍の表紙に使った)を前提にすると、
著作権以外の刑事罰に該当する可能性はほぼありません。
したがって、著作権法違反が崩れたら、他の罪で立件する余地はほぼないと考えられます。
では完全に何の責任もないということになるの?
【以下Copilotの答え】
刑事責任については ほぼ無罪 になりますが、
民事責任(不法行為) が残る可能性はあります。
ただし、これも著作権が否定されると非常に弱くなります。
民事で考えられる可能性
結論として、民事でも責任追及はかなり困難になります。
窃盗罪にはならないの?
【以下Copilotの答え】
SNS上のAI画像を“無許可でダウンロードしただけ”では、現在の日本の刑法では
窃盗罪は成立しません。
理由は、窃盗罪の対象である「財物」にデジタルデータ(画像データそのもの)が含まれないためです。
🧭 なぜ窃盗罪にならないのか(法的根拠)
🔹 1. 窃盗罪の対象は「有体物(触れる物)」
刑法235条の窃盗罪は「他人の財物」を盗んだときに成立します。
この「財物」は、伝統的に 有体物(物理的に存在するもの) に限られると解釈されています。
これらは 無体物 であり、窃盗罪の対象外です。
USB内のデータをコピーしても、USB本体を持ち去らない限り窃盗罪にならない
という典型例が紹介されています。
🧭 2. デジタルデータのコピーは「占有の移転」がない
窃盗罪は「他人の占有を奪う」ことが必要ですが、
データをコピーしても元のデータは消えません。
つまり:
→ 窃盗罪の構成要件を満たしません。
🧭 3. 過去の裁判例・学説も「データは窃盗の対象外」
学説・裁判例でも、データそのものは窃盗罪の客体にならないとされています。
例外として「電気」は特別法で財物とみなされていますが(刑法245条)、
デジタルデータにはそのような規定はありません。
⚠️ では、無許可ダウンロードは完全に合法なのか?
いいえ。窃盗罪にはならなくても、他の法律に触れる可能性があります。
🔸 1. 著作権法違反(複製権侵害)
AI画像に著作物性が認められる場合、
無断ダウンロード=複製 なので著作権法違反の可能性があります。
今回の千葉県警の事件(2025年11月20日送検)もこれに該当します。
🔸 2. 利用規約違反
SNS(X、Instagram、Pixivなど)の規約で禁止されている場合、
アカウント停止や損害賠償の対象になることがあります。
🔸 3. 不正アクセス禁止法(特殊ケース)
鍵付きアカウントや限定公開の画像を
不正な手段で取得した場合 は別の犯罪が成立する可能性があります。
クリエイター、とりわけAIで作品を作っているクリエイターの方々は、上記の(Copilotによる)法律の解説を聞いて不安を抱く人も多いのではないでしょうか。
AI作品には現状では著作権が認められていないものが多数あり、AI作品を自分のホームページやSNSに展示してそれが、無断で第三者にダウンロードされて使われたとしても、著作権法違反にもならず、窃盗罪にもならない。民事訴訟でも勝つことも厳しい。写真の場合には著作権が認められているので、無断でダウンロードされて使用されればすぐに著作権法違反が成立しますが、AI生成物には現状の法律体系では著作物性が曖昧なので、AIで作った作品が個人のホームページやSNSからダウンロードされて勝手に使われても何の罪も成立しない可能性があるのです。
もちろん、AI作品をストックフォト会社との契約の下で販売している場合には、ストックフォト会社とライセンス契約があるので、ストックフォト会社のページからの不正なダウンロードに対しては「利用規約違反」で損害賠償請求がなされるため、この点は心配ありません。
しかし、AI作品をクリエイター個人のホームページやSNSに掲載している場合、そこからAI作品が無断でダウンロードされて使われてもAIクリエイターはどうすることもできないという状況になる可能性も高いのが現状といえます。AIで作品を作っているクリエイターが今できることは、11月20日の送検事案と同じようなことに遭遇することに備えて、作品の制作過程をできるだけわかりやすく記録に残しておくことだといえるでしょう。制作プロセスが残されていれば、自分のAI作品に対する「創作的寄与」を証明することが可能となります。
いずれにしても、2025年11月20日の送検事案が起訴されるのかどうか、裁判が始まってその結果AIの著作物性に対してどのような判断がくだされるのかを待ちたいと思います。