最近、というより、この数年来、ストックフォトをやめていく人々がたくさんいます。
それも、かつてストックフォトの人物撮影でかなり活躍していた上位クリエイター(プロカメラマン)の何人もが、現在はストックフォトの活動を離れ、(ストックフォト用の)撮影を全く行わなくなってしまいました。
その理由は、個人的な関心が別のところへ移ったり、景気が少し回復してきたため、より利益の上がる仕事が増えてきたというようなこともあるかもしれません。
しかし決定的な理由は、数年前の定額制(サブスクリプション)の業界全体での導入以降、とりわけ経費を要するモデル撮影において、ストックフォトカメラマンの仕事が「撮影」よりも「(経費等の)計算」の領域に深くかかわるようになったためだと感じます。
以前はプロカメラマンが(いわば)「片手間」で気軽にできて利益が上がるのがストックフォト(の人物撮影)でしたが、サブスクリプションの導入後は(販売単価が低くなったため)より厳密な経費や企画の「計算」が必要となり、「片手間」にできる仕事ではなくなりました。
実際、以前のように、モデル代やスタジオ代が多少高くても、きれいな女性モデルさんのポートレートをきれいなスタジオでたくさん撮れは利益が出る時代ではなくなり、シビアに経費を管理し、入念に撮影企画を練らなければ、容易に赤字に陥ってしまう時代になりました。つまり、定額制の導入以前のように、経費も企画もあまり検討せずにプロカメラマンが「片手間」でストックフォトを撮影し続けることはもはや困難になったのです。
個人的には今年でストックフォトの人物撮影をはじめて5年目に入りました。この5年間どうにかストックフォトの活動を続けてこれたのは、「財政均衡主義」(ストックフォトで利益がでた資金のみでストックフォトの撮影を回していく)の原則に徹しながら、限られた予算の中で企画をあれこれと思案することが苦にならなかったからだと思います。もちろん、今後は何が起こるか、どのようになるかは分かりませんが、可能なかぎり続けていけることを願っています。
余談ですが、ストックフォトの撮影から距離を置いてしまったプロカメラマンの人たちに、敗北感のようなものは皆無だと思います。なぜならば、それらの人々はとても優秀な商業カメラマンだと思いますし、そうした優秀な人ほど経営判断は早いからです。良い軍隊は、撤退も早いのです。