「クリエイティブ・コモンズ」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
この写真の下に見慣れないCC BY-NC-ND 4.0というような表記がありますが、これがクリエイティブ・コモンズのライセンス表記です。これは何を意味しているのでしょう?
この記事では、クリエイティブ・コモンズとは何かということについてみていきたいと思います。
クリエイティブ・コモンズ(Creative Commons, CC)は、インターネットを通じたグローバルなネットワーク社会の中で、著作権を保持したまま特定の条件付きで(論文や写真やイラストなどの)著作物の自由な利用を促進させるための国際的な取り決めです。著作権を持っている人が著作権を放棄することなく、自分の著作物を無償で使用する権利を多くの人々に与える仕組みがクリエイティブ・コモンズです。
以下、クリエイティブ・コモンズとはどのような仕組みか、それを実際に使用するにはどうすればよいのか、などについてみていきたいと思います。
クリエイティブ・コモンズ(CC)は、インターネット時代に著作権を保護しながらより多くの著作物をネット上に流通させることを目的に、2001年にサンフランシスコで設立された非営利団体です。法学者ローレンス・レッシグらが中心となり、著作物を「自由に使ってよい範囲」を明示できるライセンス体系を作ったのが団体設立の契機となっています(参照)。レッシングらはインターネット時代において、著作権を尊重しつつ著作物の共有を促進することで、誰もが学び、新しい価値観を生み出せるような社会を作っていくことを目指してCCを発足させました。
では、そのような理念を実現するため、具体的にどのようにしたらインターネットにより多くの著作物が無償で供給されるようになるのでしょうか?
そのための仕組みとして考えられたのが、クリエイティブ・コモンズのライセンス体系です。クリエイティブ・コモンズのライセンスは、「著作者が望む条件で、作品を広く流通させるための仕組み」として作られています。つまり、
こうしたニーズに応えるためのライセンス体系です。
クリエイティブ・コモンズのライセンスは、一義的に著作者の宣伝を目的としたものではありませんが、CCライセンスのもとで公開された作品を使う人は必ず著作者名を表示しなければならないため、作品が広がるほど名前も広がり、そこには一定の「宣伝」の要素が含まれています。
そうした宣伝の要素があるからこそ、著作者は無料で自らの作品の使用を多くの人々に許可することができるのです。その結果、より多くの著作物がインターネットを通じて流通し、文化的・社会的な役割が果たされることになります。つまり、クリエイティブ・コモンズの考え方は、著作者にとっても利用者にとってもwin-winの関係をもたらすものといえるでしょう。
なお、「クリエイティブ・コモンズ」は団体の名称であると同時に、同団体が提唱するこのような考え方およびライセンス体系の呼称でもあります(以下CCと略します)。
CCの考えにしたがって作品を公開するには、ライセンスの表記の仕方などの一定のルールに基づいて作品を公開する必要があります。一目でこれがクリエイティブ・コモンズのライセンスだとわかる特徴は、「CC BY-NC 4.0」など、「CC BY」で始まる表記があることです。このCCライセンスを表記してインターネット上に自分の著作物(写真やイラストや文章などの著作物)をアップロードした場合、著作者はそれらの自分の作品を、誰でもダウンロードやコピーをして(以下に見ていくライセンス内容にしたがって)使用してもよいという許諾を与えたことになります。このような国際的な取り決めがCCです。
これから見ていくように、CCのライセンスには4種類の条件(営利目的利用の可不可や、改変の可不可等)を組み合わた6種類のライセンスがあります。著作者はこの6種類のライセンスを自由に選択し、自身の著作物を使ってもよい範囲を明示しながら作品を広く公開することが可能となります。
CCライセンスとは一体どのようなものなのでしょうか。まずCCライセンスを構成する仕組みからみていきます。CCライセンスを構成する基本条件は「BY」「NC」「ND」「SA」という記号で示される以下の4つの条件です。これらの条件を組み合わせて、CCライセンスの特徴的なライセンス表記がなされます。ライセンスの表記の仕方は、「CC」の後に、条件を示す記号をつけ足して表記します(CC BY-NCというように)。まず条件を示す4つの記号についてみていきます。
例えば、CC BY-NC-NDというライセンスであれば、著作者の名前を表示(BY)すること、営利目的の使用禁止(NC)、改変禁止(ND)という条件で著作物を使用してよいことが示されています。ではここからNCを外して、CC BY-NDにしたら何が変わるでしょう。NC(営利目的の使用禁止)の条件が外れたので、このライセンスでは著作者の名前を表記し(BY)改変しなければ(ND)、営利目的に利用しても良い、という意味のライセンスとなります。では、さらにそこからNDを外して、CC BYにしたらどうなるでしょうか。条件がBYだけになったので、著作者の名前を表示すれば、営利目的での使用が可能で、さらに改変することも可能という非常に自由度の高いライセンスとなります。このようにして条件を組み合わせたライセンスは、次の6種類となります。
1の条件である著作者のクレジットの表示(BY)は必ず必要な条件となっています。そのため、2番目以降の条件を組み合わせてライセンスが作られることになります。以下の表は、2026年現在CCによって認められている6種類のライセンスです。なお、実際のCCライセンス表記においては、語尾に4.0という数字を付けます(CC BY-SA 4.0というように)。4.0というのは2013年~2026年現在のCCライセンスのバージョン番号です。なお、条件を書くときは1(BY)から4(SA)の順番で表記していきます。CC ND-BYという順番にはできません。必ずCC BYからはじめます。
| ライセンス | 商用利用 | 改変 | 継承義務 | 特徴 |
| CC BY | OK | OK | なし | 最も自由度が高い |
| CC BY-SA | OK | OK | 必要 | 継承義務がある |
| CC BY-ND | OK | NG | なし | 改変は禁止 |
| CC BY-NC | NG | OK | なし | 非営利利用 |
| CC BY-NC-SA | NG | OK | 必要 | 非営利+継承義務 |
| CC BY-NC-ND | NG | NG | なし | 最も制限が強い |
1. CC BY(表示)
2. CC BY-SA(表示—継承)
3. CC BY-ND(表示—改変禁止)
5. CC BY-NC-SA(表示—非営利—継承)
6. CC BY-NC-ND(表示—非営利—改変禁止)
上の1~6までのライセンスが、2026年現在CCが公式に提唱しているライセンスです(CCライセンス4.0)。それらの中にはすべて「BY」=著作者のクレジット表記が入っています。では、このBYをなくしたCCライセンスは選択できないのでしょうか?
初期のCCライセンス1.0には、「CC 0」つまりクレジット表記を放棄して、すべて自由に使っても良いというライセンスがありましたが、現在のCCライセンス4.0では「BY」は必須の条件となりました。というのはCCの理念として「著作権を尊重しつつ著作物の共有・再利用を促進する」という方向性がより強くなったためです。
ただ、実際にはこのCC 0ライセンスは現在でも使用可能です。著作者が自らの作品のすべての権利を放棄して公表したい場合や、著作権の期限が切れた著作物の場合にはこのライセンスが使われることがあります。
したがって、現在流通しているCCライセンスは、上記の1~6のライセンスと、このCC 0ライセンスの合わせて7種類ということになります。
では次に、著作者が自分の作品をCCライセンス付きで公開するときには、ライセンスやクレジットの表記をどのようにすればよいのか、また公開された著作物を使用する人々はどのようにライセンスやクレジットを表記すればよいのかという、表記の仕方について見ていきたいと思います。
もし私(monzenmachi)が、CCの考え方に則って、「CC BY-NC-ND」のライセンス、つまり「クレジット表記あり・商用利用禁止・改変禁止」という条件でこの写真(cup and lipというタイトル)を公表するときには、この写真の下にあるようなかたちで、クレジットやライセンスの情報を記します。それぞれの情報にはリンクが張られています。リンクを含めたこの表記方法が、CCが推奨している表記の仕方です。
写真のタイトルと写真の出典・著作者名・ライセンス情報を表記し、タイトルと著作者名とライセンス情報にリンクを張る、というのが理想的な表記方法として推奨されています。
この表記は、以下のCCの公式HP(Chooserのページ)で必要な情報を打ち込むと自動的に作成することができます。(ライセンス情報を視覚的に示す)小さなアイコンも自動で表記されます。
Chooser
Chooser上で、ライセンスを選び、タイトルと著者名などを記入し、あわせてリンクするURLを記入すると、自動的にHTML形式もしくはリッチテキスト形式でクレジット表記やライセンス情報が表示されます。それをコピーして自分のHP等にペーストすれば、この写真の下にあるのと同様の表記が可能となります。
Chooserは著作者が作品を公開するときだけでなく、公開された作品を使う人にも役立ちます。CCライセンスの作品を使うときには、使用者は、Chooserをつかってタイトル・著作者名・ライセンス情報を作成し、使用する著作物の下や横に記し(ペーストし)ます。
cup and lip © monzenmachi / License CC BY-NC-ND 4.0 / Photo: https://monzenmachi.info/ License: https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/
Chooserを使えば簡単に理想的なCCライセンスの表記が可能ですが、作品を表示するサイトなどの環境で、リンクが貼れないなどの制約がある場合、テキストのみで表示することも可能です。
その場合には、作品のタイトル・著作者名・著作物の出典(URL)・CCライセンスの表示とURLが分かるようになっていれば問題ありません。
作品を公開する著作者も、それを利用する利用者も、状況に応じて、このようなリンクを貼らないテキストのみの表示を行ったり、上のようなChooserを使った表記にしたり、自由に選択することができます。
表示言語については、CCライセンスは広く世界で使用されることを前提としているため、英語で表記することが通常ですが、日本国内のみでの使用が想定されるときなどは作品名や著作者の名前は日本語での表記も可能です。
では次に、もとの著作物を改変して公開する場合の表記の仕方についてみていきます。
CCライセンスの作品を使用するときに注意しなければならないのが、もとの作品を改変して二次創作物として改変者が公開するときの表記です。
ND(改変禁止)が入っていないライセンスで公開された作品は改変することが可能です。改変者がもとの作品(原作)を改変して、二次創作物として公開するときの表記例と注意点についてみていきます。
以下の2枚の写真は、原作と改変作(二次創作物)です。
原作はmonzenmachiによってCC BY-NC-SAのライセンスで公開されています(という設定で説明していきます)。ND(No Derivatives)の条件が付いていないので、この写真は改変することが可能です。NC(Non Commercial)が入っているので商用利用はできません。また、SA(Share Alike)が付いているので、この原作を改変した人も、CC BY-NC-SAというライセンスで公開しなければなりません。原作のクレジットやライセンス表記はすでに上でみてきた表記で記せば問題ありません。
では、この原作をokachimachi氏が改変して二次創作物として公開する場合、どのように表記すればよいのでしょうか。
改変作をCCライセンスで公開する際に必要なことは
This work is based on: fallen leaves by monzenmachi, licensed under CC BY-NC-SA 4.0. This derivative work by okachimachi is licensed under CC BY-NC-SA 4.0
上に見てきた例では、SA(Share Alike)条件が含まれていたため、改変前(原作)と改変後(改変作)のライセンスは同じでしたが、改変可能な作品で、SA条件が付けられていない場合のライセンスの変更について見ていきたいと思います。
SA条件が付いていない場合、改変者は改変後の二次創作物に対して自由に元のライセンスを変更できるのでしょうか?例えば、CC BY-NC で公開された写真を改変して、ライセンスも(NCを削除して)、CC BYで公開することは可能でしょうか?
この場合の変更は実はできません。SAが付いていないのになぜできないのでしょうか?それは、
原作品のライセンスを「弱める」ことはできないというCCの原則があるからです。
つまり、
原作品の制限を外す方向のライセンス変更は不可となります。
逆に制限を強めることは可能となります。
このCC BY-NCの例でいえば、NDを加えて、CC BY-NC-NDへ変更することと、SAを加えてCC BY-NC-SAへ変更することは可能となります。
以上、SAが付いていない場合のライセンス変更の注意点です。
すでに見てきたように、現在流通しているCCライセンスは、6種類と、CC0を含めれば7種類ということになります。これら7種類のライセンスがあれば、CCライセンスのもとで著作物を公開しようとする著作者に充分な選択肢が与えられているようにみえますが、それでは足りないという場合にはライセンスを二つ付けることも可能です。
例えば、一つの写真に対して、次のような二つのライセンスを併記するような使い方です:
CC BY-ND / CC BY-NC
CC BY-NDは、クレジットの表記あり・作品の改変禁止・(NCが入っていないので)商用利用可能 を示すライセンスです。
CC BY-NCは、クレジットの表記あり・(NDは入っていないので)作品の改変可能・(NCが付いているので)商用利用不可 を示すライセンスです。
この2つのライセンスを併記することで、次のような選択肢を使用者に与えています。つまり、私の作品は、作品を改変しなければ商用利用可能ですが、改変した場合には商用利用はしないでください、という選択肢です。あまり見ない使い方なので戸惑う表記ですが、ライセンスを併記することも可能です。
以上、CCライセンスを実際に使用するためにはどのような点に注意すればよいかについて具体的に見てきました。
では最後に、CCの保証の規定とCCの現在の課題について触れておきます。
CC公式のリーガルコードの文章では、著作者は作品の品質・正確性・適法性について一切保証しないという「無保証条項」が明確に書かれています。これは、利用者が作品を使った結果何か問題が起きても、著作者は責任を負わないという立場を強く示すものです。
CCライセンスのもとで公開された著作物を利用する人は、無保証であることを理解したうえで、自己責任で利用することに同意したとみなされるため、著作物の公開者は利用者が使用した結果に対して責任を負う義務はないとされています。
詳細はCC公式のHPのリーガルコードのページ「第5条無保証および責任制限」の箇所をご覧ください。
ただし、いくら無保証の原則があるからといって、虚偽の情報に基づいて作品が公開されるような場合、例えば、自分の作品ではないのにCCで公開してしまった場合や、モデルリリースのない人物の写真に対して、モデルリリースがある旨を付記して公開した場合などは、法的な責任が生じる可能性があることは明らかです。あくまでも、虚偽ではない情報に基づいてCCで公開する場合、著作権者が無保証条項によって保護されるということです。
この無保証条項の存在によって、著作者自身に法的な責任が及ぶリスクを避けながら作品を公開することが可能となります。この条項が無ければ、無償で作品を公開しようとする人は非常に少なくなってしまうでしょう。この無保証条項は、多くの著作物を無償でネット上に流通させ、誰もが創造的な活動に参加してよりよい社会を構築していくというCCの理念を実現するために、なくてはならない条項なのです。
最後にCCの課題についても述べておきたいと思います。
CCにとっての喫緊の課題は、AIによる無断学習への対応です。この記事のはじめの方で述べたように、CCは著作物を提供する人と、それを享受する人の「win-winの関係」に基づいて維持されてきました。作品をCCで公開すると(クレジットが表記されるので)一定の宣伝になる一方、利用者は様々な知識を無償で得られるという互恵関係です。
しかし現在、CCライセンスの下で公開された多くの著作物が、クレジット表記もされないまま、AIによって無断でラーニングされています。その際には「NC(Non Commercial)」の表記も無視されてラーニングされることになるので、CCライセンスの意義を根底から崩してしまうことにもなりかねません。
インターネットを通じてグローバルに広がるネットワーク社会においては、公開すること=オープンであることは「善」であると考えられてきました。そうした価値観の中でCCは生まれ、発展してきました。しかし、AIの登場を契機に、オープン性に対する肯定的な価値観は揺らぎ始めています。無償で公開した著作物は、より良き市民と社会の発展に寄与する前に、瞬時にAIに吸い取られて商品化されてしまうからです。
CCが設立された2001年からもう25年を経た現在、CCはAI時代に適したオープン性に対する再解釈を迫られています。