NFTとストックフォト

このところ、「NFT」という言葉を耳にすることが多くなった気がします。

NFTとは、non-fungible token=非代替性トークンと呼ばれる、所有者証明書付きのデジタルデータのことです。

このデジタルデータはビットコインなどの仮想通貨と同じようにブロックチェーンを通じて発行され、だれが現在そのデータを所有しているかが分かるようになっています。

このNFTの画期的な点は、デジタルデータの偽造コピーをほぼ完ぺきに防止し、オリジナルのデジタル作品(デジタルデータとしての絵画など)の著作権を簡単に保護できることです。

例えば、現在多くの人が写真をSNSなどにアップしていますが、そのデータをコピーすることはいとも簡単で、コピーデータは拡散され、だれがコピーしたか、どこでそのコピーデータが使われているかを知ることは容易ではありません。

ところが、それらの写真がNFT化されていれば、作者が一番最初に作ったオリジナルデータの所有と所在が一目でわかり、違法にコピーされたデータと区別することが可能になります。そして、許可のないコピーデータを使っている人に使用料の請求や、場合によっては法的な措置を行うことも簡単にできるようになるのです。

将来的にこうしたNFTが広く導入されれば、現在の(ストックフォトを含む)デジタルデータやデジタルアートの販売のありかたに大きな影響をもたらすことになりそうです。特に恩恵を受けるのは、作品一つ一つの価値が高い芸術的な写真や絵画をデジタルで発表している写真作家や画家かもしれません。

例えば、この写真はトータル100枚しか発行しません、この絵は1枚しか発行しません、というようなこれまでのデジタル販売では困難だった(フィルム写真の限定プリントのような)数を限定した販売方法もNFTなら可能となるでしょうし、個々の写真家や画家はNFTを通じて作品を紐づけすることで、デジタル作品を偽造コピーの心配なくネット上に公表することが可能となります。

もちろん、芸術的な作品を発表しないフォトグラファーやイラストレーターなどもこのNFTを通じて、偽造コピーの心配なく、広く作品を公表しそこから利益を得ることができるでしょう。

ただ、個々の作家たちが個人でNFTを管理することには限界があるかもしれません。例えば、この作品を限定1枚しか発行しないと言っていた写真作家が、半年後に方針を転換し、同じデータ(写真)をさらに3つ追加発行するというようなことも起こり得ます(そうしたら最初に買った人の作品の資産価値は激減してしまいます)。そうした恣意的な運用が頻繁に起これば、NFTデータ市場が安定しないため、NFT作品の管理には個人ではなく、信頼のおける組織や会社の管理が必要となってきます。

GettyimagesやShutterstockなどの世界的なストックフォト会社は、(とりわけ写真の領域における)NFTの発行・管理会社としても重要となってくるかもしれません。

コピーされ放題だったデジタル環境が、NFTの登場によって一変していくことは明らかです。

写真や絵画だけでなく、映像、音楽、小説、漫画、コンサートチケット、個人データの管理などの領域においてNFTを軸とした商品や情報の販売方法や流通のあり方が模索されつつあるようです。

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