写真と音楽は、とりわけスピード感が求められる現代社会の中で、人々の生活や商業活動にとって大きな役割を担っています。あらゆる分野で高速化が求められる現在にあって、写真と音楽に課される大きな期待と役割は、瞬時にエモーショナルな領域に入り込み人々の心を動かすことだといえるでしょう。
言葉で説得するのは時間がかかります。論理は段階を踏まないと通じないので、必然的に時間がかかってしまいます。ストーリーを追う小説も感動を得るには最後まで読まなければなりません。一方、写真(絵やイラスト含む)と音楽(効果音も含め)は、言語とは違って、時間も論理も飛び越えて一瞬で人の心に訴えかける力があります。
曲のイントロを聞いただけで気分が晴れやかになったり、笑顔の写真を見るだけで楽しい気持ちになったりすることはよくあることです。わずか数秒の間に人の心に入り込んで様々な感情を呼び起こすことができる魔法の道具が写真と音楽なのです。ビジネスマンが長いセールストークの末に顧客の心を動かすよりもはるかに短い時間で、写真と音楽は顧客の心をつかむことが可能です。
このように考えると、ストックフォトを含めた広告写真の目的は自ずと明らかになるでしょう。説明的な写真よりエモーショナルな写真へとストックフォトの重点は移ってきていると思いますし、今後さらにその傾向は強まるでしょう。エモーショナルなものの中身も、単に常套的な内容で感動を与えることを超えていかなければならないでしょう。
音楽業界も写真業界も、サブスクリプションの浸透など、クリエイターにとっては厳しい状況はあると思いますが、瞬時に人々のエモーショナルな領域に入り込める音楽や写真の役割は今後も衰えることはないでしょうし、そうしたエモーショナルなツールを自在に扱える写真家やミュージシャンへの期待もますます大きくなると思います。