新型コロナウイルスの恐怖は、たとえこの危機がある程度収まったとしても、新型コロナ以降の世界(After Corona)に影響を与えることは避けられません。この記事では、After Coronaの経済・社会的な変化を具体的にみていきたいと思います。そして、われわれのようなストックフォトの撮影に携わる人々や、あるいはより広く広告制作にかかわる人たちは、After Coronaの世界で、どのようなコンテンツや広告を作ればよいかということについて考えてみたいと思います。
この新型コロナの問題がたとえ(ワクチンの開発によって)終息するとしても、ウイルスの変種は断続的に生まれるでしょうし、別の新しいウイルスが次々に登場するかもしれません。After Coronaの世界では絶えずWith Corona(コロナのようなウイルスとともに生きていくこと)を意識していなければならないでしょう。その意味で、今回の新型コロナの登場は、これから先の経済社会システムに深い痕跡を残すきわめて大きな出来事だといえるでしょう。ではいったい、After Coronaの世界では、実際にどのような社会・経済の変化が生じることになるのでしょうか。
経済の本質が「人と人とのつながり」にあることは歴史の授業で習った覚えがあります。(石器時代や縄文時代の矢じりに使われる)黒曜石の(古代日本における)広範な分布状況から、古代から「交易」が行われてきたことが証明されています。「交易」という人の移動と接触に基づく経済活動が、古代から今日まで絶えず行われ、経済活動の基礎を担ってきたのです。
今回の新型ウイルスの登場が致命的なのは、ウイルスへの恐怖によって人々の交流や接触が断たれてしまい、経済活動の基礎である「人々のつながり」が損なわれてしまうことです。このままではウイルスが存在する限り、経済活動は行えなくなってしまいます。そこで現代のテクノロジーは、従来的なリアルな「人々とのつながり」に頼らずに、いかに経済活動を可能にするかに全力を注いでいます。それが「オンライン化」システムの拡充です。
従来的なリアルな「人々のつながり」に代って、特にこの新型ウイルスとの取り組みの中で求められているのが、「テレワーク」に象徴される「オンライン化」システムの拡充です。
オンライン化が進めば、一般的なオフィスワークがテレワーク化されていきます。加えて、教育の分野における遠隔通信化も行われれば、ビジネスマンの通勤風景のみならず、小中高の学生から大学生までの学生の通学風景も大きく変わっていくことになります。さらに、仕事と教育のオンライン化により、親が家にいられる時間も多くなるので、保育園の「待機児童問題」も解決されるでしょう。子供の数も少し増えるかもしれません。
毎日の通勤や通学が必ずしも必要ではなくなるとすれば、居住のありかたも大きく変わっていくはずです。東京(大都市)への一極集中という居住のありかたも緩和されることになるでしょう。テレワークとテレエデュケーションを通じた一極集中の解消があってはじめて、地方分権は行われるのだと思います。
一極集中に変化が生じれれば、土地の価格も変動し、「駅近」徒歩7分圏内の土地やマンションでも価格が下落するかもしれません。環境が良い地方の土地を居住候補地として見直す人々も多くなるでしょう。
政治の領域においても、オンラインで政治活動や投票が可能になれば、現在のマンパワーに頼った集票活動や政治資金集めの形態も変化していき、ネット環境に強い若い候補者が政治に参加してきます。投票も若い人たちがスマホから簡単に投票できるようになり、若い世代の意見が政治に反映されるようになるでしょう。政治活動にかかる経費も従来よりも軽減されるため、若い候補者や多くの資産を持たない人々も立候補できるでしょうし、クラウドファンディングで政治活動のための資金を募ることもできるでしょう。
このところのテレビのニュースや情報番組は、コロナの感染リスクを減らすため、コメンテーターが自宅や別室からコメントを発するようになりましたが、個人的には特に違和感を感じません。むしろ、コメンテーターのリモートワークがここまでスムーズにできるなら、大きなTVのスタジオなどいらないのではないかと思います。バラエティーのトークにおける芸人のリモートワーク化もまったく問題ないように見えます。ひな壇芸人はすべてリモートワークで自宅から参加するのです。そうすると、もはやテレビ局の大きなスタジオもテレビ局自体も存在意義を問われるようになるかもしれません。
テレビ局という「中心」に集まり、そこからみんなで情報を発するという形態は廃れていくことになり、これからはYoutube型の個人発信をベースに、必要に応じて個々の発信者が暫定的に緩やかにまとまるという形態の極小メディアが無数に増えていくと思います。
個人事務所で活動するアーティストもAfter Coronaでは大規模なコンサートは経済的リスクが大きいので、Youtube等を通じてコンサートを発信し、そこで換金化することも増えてくるのではないでしょうか。演劇もしかりです。
総じて、After Coronaの世界では、生活領域のオンライン化が進めば進むほど、われわれの行動様式は(上に挙げたように)劇的に変容していくでしょう。オンライン化テクノロジーの展開によって、リアルな「人々のつながり」無しに経済活動が営めるようになるからです。
「人に会わずに経済活動を営める社会」は、人類史上はじめてのことになるので、実際にそれがどのような社会になっていくのかを正確に知ることは困難です。もちろんすべての職種にこのリモートワークのシステムが当てはまるわけではありません。しかし、今後の技術の発展によって、この新しい経済活動の領域はさらに多くの人々に開かれていくのにそう時間はかからないでしょう。
新型コロナを契機として促進される、「リアルな人と直接会わずに経済活動を行える社会」は、「オンライン化技術を通じてより広域な人々とつながることができる社会」となり、実はこれまでより個々人の経済活動の総量が増える社会になるかもしれません。
広告や広告写真に携わる人々も、After Coronaのこのような社会的な変化を意識しながら、より細かな生活領域において、どのような変化が生じるのかを注意深く観察する必要があるでしょう。
もしかしたらAfter Coronaの人々の生活においては、リアルな人々の距離感がソーシャルディスタンスに影響されてすこし広がるかもしれませんし、挨拶やハグの密着度や回数に影響を与える可能性もあります。また、After Coronaの人々は、画面を通じて人に会うことが多いので、ファッションやメイクの仕方が変わるかもしれません。日々の仕事では画面を通じてカメラで顔をアップすることも多くなるのでメイク用品にお金をかけたり、男性もメイクをする習慣ができるかもしれません。家にいる生活だけでは健康に良くないので、スポーツへの関心や投資がいっそう高まるでしょうし、健康的な食事や料理への関心も高まるでしょう。家族での団らん時間の増大につれて、男性の家事や育児はもちろん必須となるでしょう。家族でできる余暇や遊びにも多くのお金と時間が使われるでしょう。
After Coronaの生活領域における様々な微細な変化をとらえて、広告写真に生かしていくことがAfter Coronaのカメラマンや広告作成者に求められることになります。
昨日一日の日本の新型コロナの新たな感染者は700人を超えました。数日中には1日1000人を超える勢いです。早期の終息を望みます。