VSCOフィルターはストックフォトに役立つか?
簡単にフィルム風の写真に変換できるVSCOフィルター
VSCOフィルター(プリセット)
デジタルカメラで撮った写真がボタン一つでフィルム風の写真に変換できるVSCOフィルター(スマホ版は無料)はインスタグラムをやっている人を中心に人気がありますが、VSCOフィルターにはより大きなサイズの写真に対応できるPC用(Lightroom or Photoshop用)も販売されています。ちなみにPC用は有料です〔PC版VSCOを詳しく知りたい方は、こちらの販売サイトをご覧ください〕(追記:PC用のVSCOの販売は2019年2月いっぱいで終了します。詳細はこちらをご覧ください。〔2019年2月6日付記〕)。
フィルムカメラ再評価
巷では、デジタル臭に飽きた人たちの中には、あえてチェキや写ルンですで撮るカメラ女子の登場や、光の描写がきれいで特にインスタグラマーの間で人気の高いKontax Aria、さらにはアラーキーなど往年の著名なカメラマンに愛されたplaubel makinaなどのフィルムカメラの中古市場における品薄や価格の高騰もみられ、デジタルとは異なる味わいを表現できるフィルムカメラの人気の高まりや再評価の動きもみられます。
(写真作家は別として)純粋な商用フォトグラファーの場合はフィルムカメラを使用する人はほとんどいないと思いますが、プレミア系のストックフォト投稿者の一部や人気のあるインスタグラマーの中にはフィルムカメラでの撮影を彼らの作品の個性として打ち出している人たちもみられます。
気軽に使えるVSCOフィルターの人気
そうしたフィルムカメラの懐古主義的な人気を背景に、本物のフィルムカメラを使わなくてもデジタルカメラで撮った写真を簡単にフィルム風の写真に加工できるフィルターとしてVSCOフィルターは人気を博しています。
では実際、そのようなVSCOフィルターで加工した写真は、ストックフォトで使えるのでしょうか?
以下、実際の加工例を見てみましょう。
VSCOフィルターでの加工例
VSCOフィルターで加工する前と加工後の写真を比較してみましょう。
1.加工前の元画像(rawで撮影し、パラメーターをいじらずにそのまま現像〔縮小してあります 撮影時のISOは100〕)
2.VSCOフィルターでFuji Provia 400x HC の設定を適用
3.同様にAgfa Vista 100を適用
4.Fuji Astia 100F balance warmを適用
5.Portra 160 overを適用
これ以外にもたくさんフィルムのシミュレーションが用意されていますが、上記の例を挙げただけでも、比較するとはっきりとそれぞれの色味の違いがわかると思います。
加えて、フィルムシミュレーションの適用後に、さらに明るさや色味や周辺光量を調整するツールも用意されているのでそれを利用してさらに独自の色味に調整することも可能です(上の例はフィルムのシミュレーションボタンを一度押しただけで、ほかのパラメータは触れていません)。
これで、ボタン一つで簡単にフィルムカメラ風のレタッチができました!
ではこの写真をPixtaなどのストックフォト販売用に提出しても大丈夫でしょうか?
100%の等倍で見てみましょう
インスタグラムなどの投稿用の小さなサイズで見る限り、VSCOフィルターで加工しても充分にきれいに見えるのですが、ストックフォトとしてそれを使う場合(提出する場合)は注意が必要です。
こちらは、上の4番の写真(VSCOフィルターでFuji Astia 100F balance warmを適用)の一部を100%の元のサイズで表示したものです。
加工前の画像が↓ですので、
スマホやタブレットでご覧の方は分かりにくいかもしれませんが、VSCOフィルター適用後は、やはりノイズが乗ってしまっているようです。
正確にはノイズというより、フィルムの粒子を再現したものと言えると思いますが、フィルムの粒子もノイズであることには変わりません。
ストックフォトやクライアントのいる商用写真の場合は、写真を等倍や等倍に近いサイズで提出する必要があるため、フィルム調の再現とはいえノイズがこれだけ乗ってしまうと商品にはならない場合がほとんどではないでしょうか。
幸い、有料のPC用VSCOフィルターには、いろいろなツールが入っていて、その中に粒子(のノイズ)を少なくするというツールもあるので、それを使ってノイズを低減させることが可能です。ノイズを減らすとフィルム感も低下してしまうので、ノイズとフィルム感のバランスをとれば、もしかしたらストックフォトにもVSCOフィルターを使えるかもしれません。
個人的には(クライアントに提出する写真で)ノイズの増加の危険を冒してまでフィルターを使いたいとは思いませんが、小さなサイズのインスタ用の写真などでは使えるかもしれません。