ストックフォトクリエイター、専属優遇の時代へ

併売の時代は終わった?

専属か併売か

ストックフォトのクリエイター(コントリビューター)は、専属で販売するのがよい(=利益が上がる)のか、それとも専属にならずに複数社で併売するのがよいのか、というかねてからの議論に(少なくとも日本人素材を中心とした日本市場の場合ですが)決着がつきそうです。

P社の専属優遇策

というのはとりわけこの秋以降、日本のマイクロストックをけん引するP社の専属優遇策(専属に対する掲載順位の優遇)が以前よりも強まったように見えるからです。

実際、これまでP社で上位のグループを担ってきて、かつ他社でも併売をしている人々のランキングが軒並み下がっているようです。

個人的にはこのような専属優遇策は、自社のアーカイブのオリジナリティーを高めるためには必要でかつ正当な方策だと思います。

これまでは、とりわけ日本人人物素材を多く集めるために、他社で併売をしていても多くの素材を持っているクリエイターを一定程度優遇してきたP社ですが、今後は専属クリエイターをいっそう強固にすることによってアーカイブのオリジナリティーを高めていく方向に舵を切ったといえるでしょう。

専属優先主義の背景

P社がこのように明確な専属優先主義を打ち出した背景には、以下のような事情があると考えられます。

1.専属クリエイターの数が順調に増えていることによって、併売クリエイターに頼らなくても今後は充分な数の素材を集めることができること
2.専属なのにあまり優遇されていないと感じていた少なからずの中間領域にいる専属クリエイターに明確な旗印を示すことによって、不満や離反を防ぐことができる
3.そして何よりも、他社より圧倒的にオリジナリティーの高いアーカイブの構築を目指すことによって顧客の注目度を高め、日本市場におけるP社の存在価値をより高めることができる

併売から専属へ

併売クリエイターの今後の選択

日本におけるマイクロストック最大手のP社が専属優先主義を強めてきていることは、これまで人物を撮影してきた併売クリエイターにとって大きな打撃となることは間違いありません。P社からの収入はこれまで各々の併売クリエイターの売り上げのうち重要な部分を占めていたからです。

P社の専属優遇策(掲載順位の優遇)により、今後、併売クリエイターは作品を増やしても順位も利益も上がらないとすれば、併売クリエイターはどのように行動することになるのでしょう?P社の専属優遇策が今後も続くと仮定すれば、併売クリエイターは主に次のような選択肢を迫られることになりそうです。

1.P社の専属クリエイターになる
2.P社以外の専属クリエイターになる
3.プレミアム系ストックへの移行を試みる
4.その他の実現性の低い選択肢

1.P社の専属クリエイターになる

併売クリエイターにすぐできる有効な対策の一つかもしれません。私自身も少し前までP社に専属登録していましたが、P社の専属制度の恩恵はかなり実感できるものでした。(因みにそれでも専属を解除した理由はこちらに書いています)。P社のテイストに合った素材を提供し続ける限り、併売するよりも利益が上がると思われます。

2.P社以外の専属クリエイターになる

マイクロストック大手でいえば、S社のように「専属など必要ない」とはじめから公言しているところから、専属制度はあるものの(単品販売が弱く)専属の恩恵が定かではないため実質的には併売クリエイターが中心となっているF(byA)社、また、P社と同様に数年前まで単品販売のみを行い専属を優遇してきた歴史を持ち、とりわけ近年は日本人素材の収集とアーカイブのオリジナリティーの構築に力を入れているiS(byG社)まで、各社様々な幅がありますが、そうした中から専属の保護に積極的なところを選んで専属登録することも有効な選択肢となり得るでしょう。

これまではアーカイブの量や数が重視されていたかもしれませんが、今後はアーカイブのオリジナリティーが重要になってくることは明らかです。アーカイブのオリジナリティーが希薄になるほど、安い価格を打ち出さなければ市場で勝負できなくなり、それでは会社もクリエイターも疲弊してしまいます。

3.プレミアム系ストックへの移行を試みる

最も利益が上がるビジネスは、一つ一つの商品の単価が極限まで高められた「ブランド」化されたビジネスではないでしょうか。確かな技術と高いオリジナリティーがブランドを構築するための重要な要素です。

ストックフォトでいえば、著名な写真作家も多く参加しているG社や新興でも独創的なSt社のように、オリジナリティーあふれる素材(作品)を集めることによって、1枚ごとの販売単価を高めることができます。もちろん、そうした作品レベルの写真を撮ることは通常の商業フォトグラファーにとっては簡単にできることではありませんが。

4.その他の実現性の低い選択肢

他にも、何年か前からアメリカなど海外で一部のストックフォトグラファーの間で取り組まれている自販化の動きなども選択肢として考えられますが、知名度の低いクリエイターには実現は困難なようです。名だたる賞を持っている写真家や、数万人のフォロワーがいるインスタグラマーならば、そうした方向性も考えられるかもしれません。

まとめ

国内マイクロストック最大手のP社が専属優遇策を今後も強めていくとすれば、来年2018年のうちにも(人物素材を供給する)併売クリエイターの動向に変動がみられるでしょう。

人物を撮らないクリエイターは、人物撮影ほどお金がかからないため多少の収益の減少にはそれほど敏感にならないかもしれませんが、投資と収益の微妙なバランスで撮影を回している人物クリエイターの多くは、少しの収益の減少にも敏感にならざるを得ません。(複数社からの収益のうち)1つでもバランスが崩れれば、全体的な枠組みを見直す必要に迫られます。

(その多くはバリエーションだとしても)1万枚を併売しているクリエイターが10人どこかの専属になれば、10万枚の写真が動くことになります。2万枚を併売しているクリエイターならば5人で10万枚が動きます。

日本のマイクロストックフォト市場が、日本人素材を中心に売れていることを考えれば、一定規模の人物素材を確保することは日本市場に参加するストックフォト会社にとって必要なことです。

2018年はマイクロストックフォト業界にとって併売クリエイターの動向が気にかかる年となりそうです。