ストックフォトにおけるクリエイター側の販売方法で、専属がよいのか併売がよいのか?という問題は、長い間議論されてきた問題で、実際このHPでもいくつかの記事を書いてきました。ただ、最後にこれついての記事を書いたのが少々古く、4年前の2017年11月の「ストックフォトクリエイター 専属優遇の時代へ」という専属の優位について考えた記事でした。4年前の記事にもかかわらず、現在も少なからず検索され閲覧されています。
そのような古い記事を読んでいただくのも心苦しいので、また状況もかなり変わっているので、最新の状況に基づいてこの問題に対する自分の考えを簡単に述べてみたいと思います。
結論から言えば、次のようになります:
もしも今、ある程度経験のある(ストックの枚数のある)ストックフォトグラファーから「専属と併売どちらがいいの?」という質問を受けたとしたら、次のように答えると思います。「もしあなたがすでにどこかの専属として活動しているなら、あえてリスクを冒してまで併売にする必要はないけれど、もし今あなたがどこの専属でもなく、併売として活動しているならば、併売を続けるのがよいでしょう」と答えると思います。
4年前と比べて、ストックフォトの購買形態においてサブスクリプション化が大幅に進行し、現在は「サブスクリプション全盛期」といえるほど、サブスクリプション契約者の割合が増えました。
サブスクリプション契約でストックフォトが販売される際には、顧客はそれぞれのプランに応じて、一定の枚数を1か月にダウンロードすることが可能となります。例えば、(説明のために単純化して考えると)ひと月10000円の料金で50枚の写真をダウンロードできるプランに加入している契約者は、1枚200円で50枚の写真を自由にダウンロードすることができます。
クリエイターに対するロイヤリティーを30%とすると、1枚200円のうち、クリエイターに60円の報酬が入り、会社側には残りの140円が入ることになります。
ただし、専属クリエイターに対するロイヤリティーの設定は通常の(併売の)クリエイターより高く設定されています。仮に、専属クリエイターに対するロイヤリティーを45%と設定すると、(1枚200円のうち)クリエイター側には90円が、会社側には110円が入ることになります。
明らかなように、サブスクリプション契約では専属の写真をダウンロードされるより、非専属(併売クリエイター)の写真をダウンロードされた方が会社の手取りは多くなります。上記の条件の場合には、非専属の写真がダウンロードされた方が1枚につき30円会社側の取り分が多くなります。
会社としてはどうせ売るなら非専属の写真を多く売ったほうが会社の利益になると考えるのは明らかです。その結果生じるのは、専属に対する今までのような優遇措置(検索順位等の優遇)をゆるやかに廃止していくことかもしれません。サブスクリプションのもとでは必然的に専属制度は相対化(弱体化)していくことが予想されます。
以上のようにサブスクリプションと専属制度には本質的なミスマッチがあります。サブスクリプションを推し進めれば進めるほど、専属制度は会社の利益に反することになるからです。この本質的なミスマッチをいかに解消していくか(もしくは解消しないか)が、現在専属制度を維持しているストックフォト会社の問題となるでしょう。このミスマッチを解消し専属優遇制度を弱めれば、他社へと流出する人も出てくるでしょうし、逆に、かたくなに専属優遇を維持しようとすれば、会社の取り分は減り、ストックのポートフォリオは同質化するため、多様な顧客のニーズを逃すことにもつながるでしょう。
主要なストックフォト会社にとって、すでに写真は充分に蓄積されていると思います。写真はもういらないというところもあるでしょう。次は4Kからさらに8Kへと進んでいく動画(人物動画)のストックを今後どのようにもっと多く集めていくかが課題となると思います。動画(とりわけ人物動画)を効率的に集めるには個人的には専属制度はあったほうが良いようにみえますが、専属制度の有無にかかわらず、動画の利益がクリエイター側に多く保証されるほどより良い動画が多く集まることは明らかでしょう。顧客は低きに流れますが、クリエイターは(利益の)高いところに登っていきます。顧客を選ぶのも会社の仕事かもしれませんが、これについてはまた別の話になるでしょう。