2023年の回顧と展望3
「2023年の回顧と展望2」からつづく
次に2の「AIにまねされない作品をつくること」について。1の「AIを利用しよう」ということと逆のことになりますが、AIにまねできない作品を作っていくことの方が、実はより重要なのではないかと考えています。AIのディープラーニングは結局のところ大量の既存の物(写真等)を寄せ集めてその中から類似性やパターンを学習して出力することに向けられるので、新奇な発想を打ち出すことには向いていません。つまり、AIは既存物を学習して共通項を取り出すことには長けている一方で、まだほんの少ししか存在していないものや高度なオリジナリティーを有するものを即座に理解して出力することは得意ではありません。実際、よくネット上で見ることが多いAIが作ったグラビア写真をみても、出力される構図もテイストもかなりワンパターンに近いものが感じられるし、肌の質感などはレタッチしすぎのプラスチックフェイスになっていることがほとんどです。たしかに、よほどのAIの達人が時間をかけてプロンプトの修正を繰り返せばコンテストで賞を取るような写真を生成することも可能かもしれません。しかしそれでもディープラーニングに基づいたAIは圧倒的な個性やオリジナリティーを理解し出力するには限界があるのです。
誰がAIに深瀬昌久の『家族』や『鴉』あるいは「カラー・アプローチ」的な写真を出力することを期待できるでしょうか?森山大道の「アレ・ブレ」然り。AIさん、インベカヲリの『理想の猫じゃない』、奥山由之『Bacon Ice Cream』のテイストで出力してくださいというプロンプトでもし原作を凌駕するような見事な写真が出てきてしまったら、それはもう芸術のAIに対する敗北として受け入れなければならないのかもしれませんが、そういう日が来るまでは、われわれ人間は、AIよりも一歩でも二歩でも先を見て写真を撮っていかなければならず、それが商業的にも報われるようにしなければならないのです。
「2023年の回顧と展望4」につづく
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dec 2023