広告やウェブ上の記事でよく見かけるグラフ。売上の推移や市場規模の変化を示す折れ線グラフ、企業の成長を表す棒グラフ、あるいは投資関連のチャートなど、ビジュアルとしての説得力を持たせるために欠かせない存在です。しかし、これらを見栄えよく作るのは、実は簡単ではありませんでした。
これまで、ストックフォトの撮影でグラフを使おうとすると、まずはデザインソフトで元となるグラフを作り、色や線の太さ、背景のトーンを調整し、さらに撮影用にレイアウトを整える必要がありました。グラフを視覚的に美しく、かつ「それらしく」見えるように仕上げるには、デザインソフトを使用する技術や、作成にかける時間が必要でした。撮影前のグラフの作成準備だけでほとんど一日かかってしまうことも珍しくありませんでした。
しかし、状況は大きく変わりました。AIの登場によって、こうしたグラフ作成のハードルが一気に下がったのです。
今では、AIのプロンプト入力欄に、「黒背景に株価チャート」「未来的な売上推移グラフ」「シンプルな折れ線グラフ」などと指示するだけで、AIが瞬時にグラフを作ってくれるのです。色味や雰囲気を変えたいときも、プロンプトを少し調整するだけで別のバリエーションが生成されます。従来のように細かいデザイン調整を繰り返す必要はまったくありません。
AIを使えば、例えば以下のようなグラフがほんのわずかな時間で作成されます(以下のグラフはAdobe Fireflyで作成)。
文字が入った表形式のグラフは、文字をプロンプトで入力する必要はなく、ただ「積み立て投資による複利成長シミュレーションの折れ線グラフを作って。数字は自由に記入して。」というプロンプトや、「投資のリスク・リターンと市場規模のバブルチャートを作って」と入力するだけで図表が作成されます。
3D形状のグラフも、「3Dの円グラフを作って。数字は自由に。」とプロンプトを入力すると、綺麗な3Dのグラフが瞬時に作成されます。もちろん、正確な数字や%が必要な場合には、細かく数字を入力すると数字に合わせた割合でグラフを作成してくれます。背景は特に指定しなくてもオフィス風の絵が出てきました。3Dの形状もとてもきれいにできています。以前ならばグラフを3D風に描くことは、3Dソフトを使うなど、非常に難しかったですが、今では一瞬で作成されます。
このようにして作成したグラフや図表は、例えば、「投資」や「ファイナンシャルプランナー」などをテーマとしたストックフォトの撮影で使うことができるでしょう。実際に、撮影用アイテムとして使用する際には、印刷して使用することも、はめ込み合成として加工することも簡単にできます。
また、以下のURLのように、ウェブ上に撮影用の簡易的な「フェイク・ウェブページ」を作っておけば、撮影時にモデルさんがスマホやパソコンからそれにアクセスして、そこにあるグラフをいくつかスライドして見てもらえば、「金融関係の情報をネットで調べているシーン」などの動きのある動画を撮影することも可能です。さらに作りこめばもっと本格的なホームページを見ているシーンも撮影できるでしょう。
https://monzenmachi.info/graphs-for-photos/
AIによってグラフがすぐに作成できるので、プリントで撮影小物として資料を作る際も、はめ込み合成や、ウェブ上でフェイクページを作る際にも、これまでとは比べ物にならないくらい容易にグラフを使ったビジネスイメージの撮影ができるようになりました。
AIの進化は、確かに一部の領域でクリエイターの役割を奪ってしまう側面を持っています。これまで人間が時間をかけて行っていた作業を、AIが瞬時にこなしてしまう場面も増えました。グラフの作成のような補助的な工程だけでなく、アイデア出しや構図の提案まで、AIがクリエイティブの領域に踏み込んでくることに不安を覚える人もいます。
しかし、AIが担うのは「創造性そのもの」ではなく、「創造性を発揮するための環境」ではないかと思います。AIが作業を肩代わりすることで、クリエイターはより本質的な表現に集中できるようになるでしょう。フォトグラファーなら光や構図、モデルの空気感に向き合う時間が増え、デザイナーならブランドの世界観やストーリーに深く対峙する時間が増えることになります。
そして何より、AIはクリエイターの感性や経験を必要としています。AIが生成する画像やアイデアは、あくまで素材にすぎず、それを選び、組み合わせ、意味を与え、作品として成立させるのは人間の判断です。AIとクリエイターは、対立する存在ではなく、AIが作り出す膨大な可能性を、クリエイターが方向づけることで、これまでにない作品が生まれていくことになるでしょう。
効率化によって生まれた余裕や余白は、創造性を深めるための時間となり、AIが提示する多様な選択肢は、クリエイターの発想をさらに広げることにつながります。AIと人間が手を組むことで、クリエイティブの未来をこれまで以上に豊かで、多様なものにしていくことが、クリエイティブな仕事にかかわる人間の役割になるでしょう。